HTML> 良ちゃんのヨレヨレ北京旅行記 第11回北京雑記帳1
 
  北京旅行記の第11回目をお届けします。

  今回は少し趣向を変えて、「どこに行って何をした」式の旅行記をちょっとお休みして、わずか13日と短い期間でしたが、その間に見聞きし、体験し、感じたことを毎日書きとめておいた雑記張からそのいくつかを雑感として書いてみたいと思います。 

1.暑さと、乾燥した空気と、砂ホコリにまいった

前門大街・再開発完成予想大看板の写真  今回北京に出発した5月11日前日までの福岡での気温は、毎日だいたい23〜24度ぐらい、それほど暑くもなく、かといって寒くもなく、初夏のすがすがしい気候だったと思います。
 ところが北京に着いてみると、いきなり30度以上。
 実質的な旅の初日、北京市内を歩き始めた12日は32度。
 それ以降も連日の晴天続きで、気温は32〜33度、まずこの暑さに参りました。まして、よその国に来て、ほとんどよく知らない街を自分たちの判断だけで歩くのは心身両面でプレッシャーがかかります。
 移動のためによく利用したのは地下鉄ですが、下りはよいよい、登りは恐いで、福岡市の地下鉄のようにホームから上がるエレベーターやエスカレーターのある駅が少ないので、汗を拭き拭き、息を切らせて階段を登り、地上に出るのがたいへんでした。
 やっとの思いで外に出ると、今度は乾燥した熱い空気と、強い風が巻き上げるホコリが待っています。
 来年のオリンピックを控えて北京市内はどこもかしこも工事中、古い住宅街、いわゆるフートンを壊しているところも多いし、ビルの建設現場、道路を掘り起こしているところもやたらとあって、それらのホコリが乾燥した空気を運ぶ強い風に巻き上げられます。
 おまけに連日の高い気温なのでホテルは当然冷房しています。
 部屋の中は乾いた空気がさらに湿度を下げてしまうので、毎晩夜中になるとノドの粘膜がくっついてしまうのではないかと思うほどカラカラになってヒリヒリと痛みました。
 そんなわけで、私たちは二人ともすぐに鼻とノドをやられてしまい、滞在後半ではさらに風邪引き状態まで症状が進み本当に参ってしまいました。日ごろ皆さんから若い、若いとおだてられていい気になっている私も今度ばかりは年齢による体力の衰えを痛感したしだいです。
 なお、たまたま街で知り合った北京在住六年の日本人男性から、ホテルでは寝る前に水をジャブジャブ床に撒いて寝ることをアドバイスしてもらい、以来これを毎晩実行したお陰でかなりノドのダメージが軽くなりました。余談ながら寝る前に水をたっぷりまいた床は朝にはきれいに乾いていました。いかに空気が乾燥しているかがよく分かります。
 北京でこのような体験をしてみると、日本の気候のありがたさがつくづく分かります。四季に恵まれ、湿度が適当に高いので身体に優しい日本の空気。それに比べると夏は40度、冬はマイナス20度、おまけに黄砂と乾燥した空気の北京の気候は過酷です。
 先ほどの男性は私より1才上の69才の方でしたが、こちらに来て二年間は風邪と下痢の日々だったと言われていました。
 私は北京では暮らせないな、と思いましたね。
 

2.北京でチャミスル

 私たちが滞在していたホテルから5、6分歩いたところに、コンビニ、それも日本のセブンイレブンがあったので、今回の旅行ではずいぶんと助かりました。コンビニエンス・ストアは中国語でも「方便(べんり)商店」と言いますが、私たちのような貧乏旅行者にとっては文字通り便利な存在でした。
 なにも中国まで行ってセブンイレブンを利用しなくても、と思う部分は確かにありますが、やはりコンビニは便利です。なおかつ、日本から出店しているコンビニだと売っている商品も安心できますから、一日おきぐらいに行って、翌朝に食べるパンやジュース、牛乳、またホテルの部屋でゆっくりとくつろぎたい時に飲むビールや酒を買いました。
 さて、問題はその酒です。中国のビールは有名な青島ビール(アルコール度数4.5%)はもちろん、地元北京でもっともポピュラーな燕京ビール(3.7%)も美味しいので、街なかで食事をする時にはよく飲みました。ただ寝る前にあまり水分を取ると、昨今の私は夜中に忙しいことになるので、なにかビールではない酒の種類を飲みたいな、と言うことになります。
 そう思ってセブンイレブンで酒コーナーを見てみたところ、これが嬉しいことにいろいろと置いてあるのです。中国の白酒(ばいちゅう)や黄酒(ほあんちゅう)各種はもちろんワイン各種までたくさんあります。さらに、日本酒党の私には嬉しいことに、以前から知っていた奈良県大和郡山市に本社がある中谷酒造が、中国・天津市に進出して苦労の末、今では中国国内に一定の地位を確立した日本酒「朝香(あさか)」の吟醸酒4合瓶もあります。松竹梅の2合徳利もあります。日本の焼酎も各種あります。
 しかし考えてみると、中谷酒造さんには悪いけど、北京に来てまで日本の酒を飲むのもちょっと癪な気もします。だからと言って、中国の焼酎である白酒(ばいちゅう)は、軒並み度数が40度以上なので、飲みなれない私にはちょっと怖い気がします。
 そこで私が選んだのは、同じ棚に並んで置かれていた韓国の焼酎「チャミスル」です。度数も20度と表示されているので安心な気もします。この際、「遊び心で北京でチャミスル飲んでみよっーと」と言うわけで300CC入りの瓶1本17元、約270円を買ってホテルに帰りました。これを部屋の冷蔵庫で冷やしておいて翌晩飲んでみたところ、少し甘みがあって口当たりとノド越しが良く「これ、いけるよー」って感じになりまして、その後またまた買ってきて楽しみました。北京の夜に飲む韓国の酒「チャミスル」、気持ちの良い飲み心地も手伝って、今自分がとても国際的な空間の中に漂っているような不思議な感覚の酔いに浸ったしだいです。
 後日談ですが帰国後、あの北京で飲んだチャミスルの味が忘れられず、早速近所の酒スーパーに行ってみたところ、同じメーカー(真露・ジンロ)の焼酎の隣に700ミリリットルの瓶でちゃんと販売されていました。値段も800円ぐらいで手ごろです、他のスーパーにも置いてありました。元来が日本酒党の私ですが、おかげでと言うべきか、幸いと言うべきか、現在では北京で覚えた韓国の酒・チャミスルがレパートリーに加わり、アルコールライフに彩りが広がることとなりました。

3.北京の救急車

 私たちは結局北京に12泊13日滞在したわけですが、この間に面白いと言うか、不思議なことに気がつきました。それは北京では救急車を一度も見ることが、そしてあのサイレンを一度も聞いたことがなかったと言うことです。もちろんそういった制度はちゃんとあるはずですし、映画で救急車のシーンを見たこともあります。でもここ北京だけでなく、そう言えば上海でも救急車はあまり見かけなかったですね。
   今、日本では、救急車だとタダで病院に連れて行ってくれる、などと簡単でわがままな理由から救急車をタダのタクシー代わりに呼ぶ不届きな連中が増えて、本当に必要な人が呼んだ時に搬送が遅れる事態もあるとか。
 私の自宅付近も幹線道路があるので救急車のサイレンを聞かない日はありません。
 でもピーポ、ピーポのサイレンがまったく聞こえない北京の街はなんだか不思議で不気味です。人口密度が高い北京の街でその必要性はむしろ高いはずなのですが、制度上なかなか呼びにくい何かがあると言うことでしょう。
 

4.ドイツ人が多かった?

北京は、王朝が続いた長い歴史と、高度な文化が育った世界でも稀有な町です。一つの町に世界遺産が六つもある一大観光都市でもあります。ですから日本はもちろん、世界中から、また中国中から観光客がやってきます。

北京で多かった欧米人観光客の写真 今回も有名観光地ではたくさんの外人に(自分もその一人ですが)出会いました。一人か二人旅だと有名な観光スポットをバックに「すみません、ちょっとシャッターを押していただけますか?」と言うことがあちらこちらで起きます。
もちろん私たちもそう言っていろいろな国の人に頼んでシャッターを押してもらいましたし、お返しに今度は私が押してあげたことも何度となくありました。
私の場合一眼レフカメラを持って歩いていたので、写真が上手そうに見えたのでしょうか、多くの人たちから撮影を頼まれました。
そうするとそこでひと言二言、たとえば「どこの国から来ましたか?」とか、「お仕事ですか?観光ですか?」とか、「旅行は何日間ですか?北京の印象は?」と言った簡単な会話を交わすことが良くあります。
このようにして今回多くの国の人たちと触れ合ったのですが、その中で意外なことを感じました。それは偶然かもしれないですが、予想していたアメリカ人が以外に少なくて、ヨーロッパ、中でもドイツ人が一番多かったことです。次いでオランダ、フランス、スエーデンなどの北欧の人たちが多かったのが印象に残りました。
さらに驚いたのは、彼らヨーロッパやオーストラリア、ニュージーランドなどからの人々の多くが半月以上の長い旅行をしていることです。
何人かは一カ月以上と言っていましたし、その中にはモスクワを振り出しにシベリア鉄道を利用して極東にやって来た、と言う家族もありました。さらに驚くのはこの家族の場合は夫婦が10代半ばの子供を一緒に連れて来ていることでした。
そもそも我々日本人と休暇や旅行についての感覚がまったく違うのと、長期休暇が取れる社会のシステムがきちんと整備されているからでしょう。
もう一つ興味深かったことは、ヨーロッパの人との会話の中で何度も出てきた「あなたは新しい中国(モダーン・チャイナ)と、古い中国(オールド・チャイナ)とどっちが好き?」と言う質問です。
ビジネスマンや研究者でない限り、現代中国を見に北京に出かける人はいないと思うのですが、なぜかヨーロッパの人からこの質問を何回もされました。
  もちろんこの質問に対する私の答えはいつも「アイ ライク オールドチャイナ」であったことは言うまでもありません。

今回は旅行記の中休みをさせていただき、旅の間の雑感をいくつか書きました。次からまた旅行記に戻りたいと思います。
  (第11回 終わり)


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