北京旅行の第5回目です。

これまで読んでくださっている皆さんに感謝します。反応が分からないので不安ですが、このまま書き続けさせていただきます。関心のない方にはお邪魔でまことにすみません。
前回第4回では、北京に来て第2日に(動き始めて実質第1日目になる5月12日)天壇公園に行った時のことを書きました。
この日は結局17000歩近くも歩きました。私の中国旅行はとにかく歩きます。どこの街に行っても広いこともありますが、何でも自分の目で見ることに旅行の意義を見出すことにしているためにどうしても横道に入り込んだりして余分に歩いてしまいます。私たちは日ごろの生活では散歩をよくするほうですが、それでも歩いて一日に8000歩ぐらいなものでしょうか。
天壇公園に行ったこの日は、実質旅の初日なのに、いきなりたくさん歩いたので、さすがに妻が足が痛いと言いだしました。今回のために新しく準備したウォーキング・シューズのサイズが少し小さめだったのがよくなかったようです。
 やむを得ずホテルに帰る前に、バス通りの小さな靴屋さんでスニーカーのサイズの大き目を選んで買う羽目になってしまいました。値段は約2500円、こちらの値段では決して安くありません。
値切ってみたものの女性店長がなかなか強気で、頑として譲歩してくれません。結局一割ほど安くなったところで仕方なく妥協したのですが、妻が足を痛がっていることを見抜かれたのが失敗だったかも知れません。靴の買い物だけに「足元を見られた」と言うことでしょうか。
でも店を出る時に、女性の店長が笑顔で「よかったら食べて」とリンゴを2個もくれたので、足も痛い、財布も痛い中、ちょっぴり心が癒された感じがしました。

さてその晩の食事では、皆さんの中にもご存知のかた、聞いたことがあるかたもあるかと思いますが、あの有名な北京名物「北京ダック」を食べることにしました。北京に来た観光客のほとんどが食べる体験をするであろう、この「北京ダック」。簡単に言えばアヒルの丸焼きです。内臓は抜いてありますが、頭も足もついたままのアヒルを特別なかまどの中でこんがりと色をつけて焼き上げ、ワゴンに乗せて客のテーブルのところまで運んできて、見ている目の前で白い帽子と服を来たボーイさんが包丁で切り分けて皿に入れてくれます。
美味しいのはこんがりと香ばしく焼けた皮の部分で、その下の身はそれほど美味しいとは言えません。テーブルには米の粉を薄く延ばして焼いたクレープがあり、白髪ネギ、キュウリの細切りと一緒に包んで甘味噌だれをつけて食べます。料理としては前菜とスープなどがつきます。
 北京には有名店がいくつもあり、はじめは最も有名な「全聚徳」(ぜんじゅとく)の本店に行くつもりだったのですが、ここも北京オリンピックを控えて全面改装中だったので、私たちが滞在するホテルの中にある「便宜坊」(べんぎぼう)と言うレストランで食べることにしました。
この店の名前となっている「便宜」とは中国語では値段が安いことを意味します。このレストランは、感じの良い店舗空間と接客サービス、そしてリーズナブルな価格で最近北京で急速に多店舗展開をしている人気店と言うことになっています。

北京ダックを切り分ける店員さん ホテルの部屋で一日の疲れとホコリを熱いバスの湯で洗い流し、七時ごろ店に入ると、広い店内は地元の人たちらしい中国人と、ヨーロッパ系のお客がほぼ同じぐらい、どのテーブルも満席状態です。私たちのように二人だけの客はほとんどいません、なにか場違いのところにいるような感覚です。でも私たちは案内されるまま端っこのテーブルにおずおずと小さくなって座り、注文をすることになりました。
私たちは二人だけだし、その上最近は肉けのものはあまり沢山食べないほうなので、とりあえず北京ダックは二分の一羽分を注文しました。

結果論ですが、この店で北京ダックを食べたのは失敗でした。店員の接客も良いとは言えないし、ビールはこれしかない、と言うので仕方なく頼んだジョッキの地ビールもまずく、第一肝心本命の北京ダックの味も今いち、それを巻くクレープも粉っぽい味がして、お世辞にも美味しい食事が楽しめたとは言えず、ガッカリして部屋に戻りました。どうにも納得できないので気持も落ち着かず、前もってコンビニで買って部屋の冷蔵庫に入れておいたビールを飲みなおしたほどでした。
私自身は七年前に、先ほど名前を上げた有名店の「全聚徳」で一度食べた経験があるのですが、味の点でも、北京ダックの店らしい雰囲気の点でも今回の店よりはずっと良かった印象がありました。
それだけにこの晩の北京ダックと店の感じには失望しました。ただ、後で分かったのですが、この「便宜坊」と言う店、他にもさまざまな料理があり、それらは値段もまずまず、味もそこそこ良いので、あとのほうでは何回か利用することになります。
 「名物に美味いものなし」と言うことばがあります。私はこの言葉にはかなり真実味を感じる人間でして、国の内外を問わず、旅行先ではほとんど名物と言われる食べ物には関心を持ちません。よくデパートで「全国うまいもの市」とか「駅弁まつり」などやっていますが、生意気なようですが、まずそれだけを目的に足は運ばないです。
では今回、なぜ「北京ダック」なのかと言いますと、やはりこれだけは北京に来た以上、一度は妻に体験させたいと思った、いわば親心だったのでしたが、「名物に美味いものなし」と言うことば、国を超えても普遍性を持つ言葉だったことを改めて確認できた夜となりました。
しかし、「北京ダック」がまずい食べ物かと言うと、決してそうではありません。もしそうだとするとこんなに有名な名物料理になるわけがありません。有名店も数々あるようです。今回の結論としては、私が自分の懐と相談して行く店を選んだところに最大の失敗があったということにしておきましょうか。
(第5回終わり)

さて、次の第6回では、あの日中戦争の発端となる事件の舞台となった「盧溝橋」に出かけます。どうぞお読みください。

盧溝橋へ続きます。
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最初のベンチへ戻ります。

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